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『環境・資源・健康を考えた 土と施肥の新知識』出版記念式典
渡辺 和彦 先生(東京農業大学 客員教授)基調講演


渡辺和彦先生

東京農業大学 客員教授
渡辺 和彦先生

渡辺 和彦先生 プロフィール

元兵庫県立農林水産技術総合センター部長
東京農業大学客員教授
兵庫県立農林水産技術総合センター農業大学校嘱託
農学博士

植物栄養生理、微量要素の第一人者。食と農(ミネラルと人の健康)に深い造詣があり啓蒙中。
「野菜の要素欠乏・過剰症」、「原色生理障害の診断法」、「農業技術大系・土壌施肥編」、「糖尿病、認知症、骨粗しょう症を防ぐ ミネラルの働きと人間の健康」(いずれも農文協)、他海外を含む著書多数執筆。





「今、新たな肥料の夜明け」



( )内の数字は講演資料の該当ページ数です。
講演時の資料はこちらをクリックしてダウンロードして下さい。
はじめに
講演1

 本日はこのような機会でお話をさせて頂くのは大変有難いです。とくに熊澤喜久雄先生には私がお手紙を書いて来て頂いております。
 上杉会長から熊澤先生とどのような関係かと聞かれました。私は直ぐ答えました。「目標」です。私の執筆は少し難しいのですが、いつ、熊澤先生に読んでいただいても恥かしくない内容にしております。そう言った意味の「目標」です。
 そして、今回のこの講演も是非熊澤先生に聞いて頂きたいということで、わざわざ来て頂いたのです。有難うございます。実は、今、新たな肥料の夜明け というのは、本当に「新たな肥料の夜明け」なのです。


『Fertilizing crops to improve human health』(P1)

 今、仰った、演題の3つのキーワードのなかで「健康」と言うことを前面に出した土壌肥料の本は無いです。が、しかし、私一人の考えではないのです。国際的には、これは2012年5月にインターネットで、皆様、無料でダウンロードできます。130ページ、まだボリューム1しか出ていませんが、この英文、訳し方は色々あると思いますが、例えば私が訳しますと、「肥料は人間の健康に貢献できる」そこまで私は確信が持てるようになりました。
 この本は、国際肥料工業協会、国際植物栄養科学者会議の共著、両社から出版されております。まさに、肥料が人間の健康に貢献できる ということが国際的にも当たり前なのです。私一人が勉強しているのではなく、皆、勉強をしております。世界の人口増加率や地域におけるミネラル欠乏障害を考えておりますと、食糧としての量確保だけでなく、内容成分の充実にいかに肥料が大事か、ということが誰にでも分かってくるのです。


『日本国内での人間での亜鉛欠乏の発見』(P2)
講演2

 (P1)私はこの本を5月に見ましたけれど、それ以前から肥料と人間の健康の関係を感じておりました。
 (P2)今日の講演は、『今、新たな肥料の夜明け』に私が至った道について説明したいと思います。
 (P3)まず、第一に日本国内で人間のミネラル欠乏症があるということです。現在の日本において少人数ではないのです。非常に多くの方が亜鉛欠乏であることが発見された事実は、私には衝撃的でした。この本の214ページに書いております。日本国内で亜鉛欠乏の方がたくさんいらっしゃることを最初に見つけられたのは、倉澤隆平先生です。倉澤先生は東京大学医学部を卒業され長野県の市民病院で医院長をされた方で、正義感のものすごく強い先生です。市の幹部の市民に対する医療行政のあり方が違うと言ってケンカをして定年前に辞めてしまわれました。いくら自分が正しくともケンカをして辞めたら気持ちの悪いものです。
 (P4)そして、行かれたのが村の温泉診療所です。お医者さん一人です。所長ですが、お医者さん一人の診療所に行かれて、寂しかったと思います。倉澤先生とは、私も親しいです、ここに行かれたときは、「もう人生終わりだ」、市民病院の医院長と違いますよ、小さな温泉診療所です。ご自分の信念を貫かれたのですが、ケンカして辞めたら、やっぱり気持ちが悪いです。
 そこで一医師として診察に当たっておられましたけれど、大発見をされました。今、「渡辺さん、人生というのは分からないものだ」と、いつも、言っておられます。
 (P5)大発見されたのは、実は、このお婆さん、今、お元気になっておられます。個人情報保護法とか色々ありますので、写真は中々載せられませんが、日本土壌肥料学会誌にも載っています。この写真は、もちろん許可を貰って載せているわけですが、このお婆さんがこの写真の2年前、歳がいくと食事が食べにくい、美味しくない、しかも、口内炎とかで舌が痛い、もう食べたくないのです。食べようと思ったら舌が痛いのです。段々それが高じてくると拒食症になります。拒食症になったら寝たきりです。食べないですから。そしたら床ずれもひどい。家族の方に言われて、倉澤先生がご家庭に訪問して、声をかけても返事もしない、そして倉澤先生も「もう寿命ですね、89才ですから…」と言ったものの、倉澤先生はお婆さんの血液検査を以前した結果、亜鉛の値が低いものですから、亜鉛を含んでいる胃潰瘍の薬、プロマックという薬を処方して帰られた。3週間ほどして、おばあさんが家族の方に連れられて温泉診療所に来られた。「先生のお蔭です」と。ものも言わなかったお婆さんが、「あれも食べた、これも食べた、先生のお蔭です」と、元気になられた。家族の方もびっくりされた。一番驚いたのは倉澤先生です。まさか、亜鉛で治るとは思っていなかった。そして、その後数か月するとプロマックという薬だけで床ずれも治ってしまった。これは事実です。事実の良いことは人の噂になることです。
 (P6)そして、人の噂になって、偉いと思うことはみまき村の議会の方々です。議会の方々が予算化して、住民全体、高校生は協力を得られなかったため、入っていませんが、1431名の血液中の亜鉛の検査をしました。当時の基準は70μg/dLです。今は80μg/dLになっておりますが、亜鉛欠乏の方が非常に多いことが分かりました。  これは世界で初めてです。病人の方の血液検査の結果はあります。健康な方で一つの地域で1431名もの血液検査をしたデータはまずないです。全ての文献のデータを調べているわけではありませんが、少なくともこのデータが日本微量元素学会誌に出ていましたので私はびっくりしたのです。そして直ぐ倉澤先生にお手紙を書いて色々な資料を送っていただいて、ご厚意にさせて頂いております。
 実は、この図では高齢になると血液中の亜鉛が減っているのですが、京都大学で老年医学研究をされている先生から直接お聞きしましたが、これは食べ物が悪いためです。正常値、すなわち各年齢の亜鉛の基準値は同じです。年齢による差はありません。大人でも子供でも老人でも80なのです。そう言ったデータもあるのです。やっぱり食べ物が影響をしている。
 (P7)そしてこれは症例の一例ではありますが、こういった床ずれがプロマックという亜鉛製剤だけで治る。下は軽い症状ですが、別の方です。床ずれだけと違うのです。
 (P8)これは日付が書いてありますが、皮膚の爛れです。
 (P9)亜鉛だけできれいに治る。大発見です。倉澤先生は色々なところで講演されておられますが、何も床ずれだけではないのです。
 (P10)私も医学関係の研究会に入っておりますので、知り合いは出来ています。この方は長野県のリウマチ専門の小野先生です。お知り合いの方でリウマチの方がおられるかと思いますが、痛い痛いのです。そして皮膚はセロハンのように薄いのです。小野先生は亜鉛製剤を投与して患者さまの為に、リウマチそのものは治りませんが、リウマチの症状が緩和されることを実感されておられます。

 そして、有沢祥子先生、綺麗な方でしょう。実は10年前の写真です。今の写真も持っているのですが、この方が“夢があってね!”とおっしゃいます。この方はこういう本〈『アトピーが消えた、亜鉛で直った―副作用ゼロ・目を見張る効果 』(主婦の友社,2002)〉を出しておられますが、私は信用しなかった。2冊本を出されていますが、信用できなくて倉澤先生とか小野先生とかにお聞きして、“本物や”とお聞きして、それからお会いして、最近は親しくさせていただいています。亜鉛でアトピーが治ると、聞かれてびっくりしませんか。アトピーが亜鉛で治るのです。本当ですよ。ただし、使用される亜鉛の量は違います、これはお医者様のもとではないと、駄目なのです。だから、こういう講演の後で、「渡辺先生、私、アトピーで・…」と聴衆の方から言われますが、「今はインターネットで予約できますので、有沢先生の所に行かれたら治療して頂けます」と言っています。
 実は、亜鉛はアトピーの治療薬としての保険適用薬ではないのです。プロマックは胃潰瘍の薬として保険適用されるだけです。長野県は亜鉛欠乏ということで、この処方は受けられます。長野県の方は大丈夫です。長野県と長崎県だけです。それ以外は亜鉛欠乏でも保険適用にならないから自費診療になります。そういうことを私は現在一生懸命勉強しておりますが、まだ発展途上です。

 (P11)後藤先生は本にも書かれておりますが、農地にはリン酸が一杯貯まっております。
 亜鉛と(P12)リン酸は仲が良くて一緒に結合してしまいます。
 (P13)次のデータです。『土と施肥の新知識』の212ページに書いてあります。近畿中四農研の堀さんの論文からの抜粋です。稲わら牛糞堆肥、おがくず豚糞堆肥の中にはたくさん亜鉛が入っております。土壌中の全亜鉛、可溶性亜鉛という分析法でやった亜鉛は、化学肥料単独よりもたくさん入っております。19作の連用試験です。タマネギに含まれる亜鉛の量は化学肥料のほうが多くて、堆肥をやっているほうは、土壌中にたくさん亜鉛があるのに値が少ないのです。リン酸と結合してしまった亜鉛は吸収されないのです。
 (P14)これは、省きますけれど、私たちがやったのですが、有機物施用でマンガン欠乏も出ます。銅も非常に強く有機物と結合してしまいます。たくさん豚糞などでやりまして、銅は土壌中にありましても、作物体中の、これは中央農研の木村さんのデータですが、本書(『土と施肥の新知識』)207ページにでております、この様に決して作物体の銅含有率は上がらない。亜鉛の場合は上がる場合もあるが、下がる場合も多い。リン酸の量に左右されます。これが、今、一つの、新たな肥料の夜明けに至る道です。肥料の施用方法が人間の亜鉛欠乏に関与していたのです。


『硝酸塩の歴史は世界的規模での間違い』(P15)
講演3

 越野先生にもお手紙を書いて事務局から是非参加をしてくださいとお願いしました。今日、来て頂いております。
 「硝酸塩の歴史は世界的規模での間違い」これ大きいのです。実は、ラジオでのコマーシャルでもあるのですが、「このサプリメント、ジュースは無農薬・無化学肥料で作った野菜ですから、健康で安全です」。私、涙が出てくる。なぜ、そんなに化学肥料がいけないのか。腹が立つというよりは私は情けないのです。なぜ、化学肥料がよくないのか。多くの市民がそう思う大きな、一つの原因は硝酸塩だったです。
 (P18)越野先生が、リロンデルの本を翻訳して頂いて、「硝酸塩は本当に危険か」という題名で本を農文協から出されていますが、この本は非常に有難い。この本のお蔭で少なくともかなりの方が硝酸塩の毒性を余り強調するのは良くないと分かってきておられます。
 (P16)私は、この越野先生の本にも出ております前川先生の論文をこれ(『土と施肥の新知識』)に引用掲載しております。何故、これ(硝酸塩)が良いか、今日は詳しく話をしませんが、硝酸イオンはシグナル伝達をします。この写真ですが、アンモニア窒素だけでは野菜は育たないのです。それに硝酸イオンがちょっと入ると育つのです。硝酸イオンがアンモニアをグルタミンに変える酵素、GS2を誘導するのです。  (P17)実は、越野先生が翻訳される前にイスラエルに行ってハイファケミカルのウジーさんから、私が日本では硝酸が問題ですと言いましたら、これは証人として、山中正仁君の名前をだしています。兵庫県農業試験場の花の担当者と二人で2000年9月に行ったのです。ハイファケミカルは硝酸カリの会社ですから、硝酸塩について詳しいことを聞きました。特に硝酸塩はピロリ菌を殺すと言われて当時は驚きました。山中君も聴いています。  (P19)その後、英訳本は2001年に出版され購入しましたが、当時地方公務員で、私は何もしませんでした。越野先生が2006年に翻訳して頂いて本当に助かりました。
 (P18)結論を言いますと、硝酸塩の歴史は、50年以上も続いた世界的規模での科学の誤りである。今こそこの遺憾な、そして高くついた誤解を正すときである。ここが一番大切です、硝酸塩は人体内で恒常的に生産されております。このことは前から分かっていたのですが、ノーベル賞研究でそのメカニズムが分かったのです。生後3ヶ月未満の幼児以外の人は亜硝酸塩を処理する能力を持っている。これも昔から分かっていました。硝酸塩摂取をガン発生の原因に導く証拠がない。これはデータが出ていなかった為、どの位か分からなかった。
 (P19)これは硝酸でノーベル賞を貰ったイグナルが書いた本です。日本語に翻訳されております。今日は省きますが、植物でも一酸化窒素が出来ます。一酸化窒素はシグナル伝達をしております。私たちのダイズでの実験では、硝酸カルシウム施用で病気に強くなるのですが、カルシウムだけでなく、一酸化窒素が抵抗性誘導に関与していた可能性が高いのです。

講演4
 

(P20)そして、実は、人間の体のなかで、183ページに載せておりますが、NO(一酸化窒素)というのは、体内の硝酸を作る素なのです。ノーベル賞のNOについて説明します。何故、ノーベル賞を貰ったかと言うと、NOはガスなのです。それが体の中で重要なシグナル伝達をしていたことが明らかになったためです。人間の体にあるアルギニンから一酸化窒素合成酵素によってアミノ酸のシトルリンとNOが出来るのです。これが出来るとグアノシン3リン酸がサイクリックGMPにする酵素を活性化して、サイクリックGMPが平滑筋を潤めて血管が拡がる。そうすると例えば狭心症でニトログリセリンを飲むと血管が拡がって血液がさーと流れるようになって狭心症を防げる。この話は一つも面白くない。
 で、私が話をするのは、男性が女性を見ると、血液に神経からNOが出るのです。そうするとペニスの中にあるグアノシン3リン酸をサイクリックGMPにして、そして平滑筋(血管の内側にある)を弛めてペニスが勃起する。分かり易いでしょう。それで、しかも、ついでですから話をしますと、サイクリックGMP(環状型GMP)はほっておくと直ぐに分解してしまって、元気がなくなるのですが、この分解を阻害するのがバイアグラです。
 農文協の編集部が偉いと思ったのはこの本の183ページ見てください。バイアグラを太字で書いてあります。農業と土壌肥料の本にバイアグラが出るのは、多分初めてと思います。NOは血管を弛めるだけでなく血小板凝結抑制作用がありヘモグロビンと結合して、もちろんNOとかNOが出来ますが、これは直ぐに再利用される。このようにNOから硝酸ができるのです。硝酸は外部から取らなくても体内で出来るものです。
 (P21)それからスライドに示すような長所が硝酸にあります。この本に書いていますけれど、体液に入った硝酸イオンは唾液で口中細菌により亜硝酸イオンになり、虫歯予防となる。ライオンの歯磨き、シュミテクトには硝酸カリが入っております。また、胃酸のような低pHでは亜硝酸は非酵素的にNOの変換し、NOは胃内の平滑筋に作用してストレスで張った胃を弛めてくれます。潰瘍を治癒してくれます。そして、NOはピロリ菌周辺に発生した活性酸素と反応して、過酸化亜硝酸を生成します。これはピロリ菌の呼吸を非可逆的に阻害します。即ちピロリ菌を殺します。
 (P22)それから、越野先生の本にも度々出てくる日本人の研究者前川さん、三輪先生の前書きにも出ていました。前川さんのデータがWHOとか国際機関で採用されているのです。たくさんのマウスを用いて2年間掛けて行った実験です。元々、前川先生は日本で今規制のある亜硝酸とか硝酸は癌を発症させるのではないかと思い実験しました。表の下に詳しく書いてありますけれど、Cはコントロール、Lは低濃度の亜硝酸、Hは高濃度の亜硝酸です。マウスを飼っていて死ぬたびに解剖をして、どこの臓器に癌が発生したか、この表では左から子宮癌、乳癌、造血器官は白血病です。これらの器官別の癌の発生を、最後は実験したマウスを全て殺してどこに癌が発生したかを調査しております。統計的な有意性は難しいですから、結論は「硝酸や亜硝酸を飲むことによって癌の発生が増加するとは認められなかった。」硬い結論ですね。減っているのですけれど。
 (P23)統計的な有意性が認められた部分もあります。硝酸ナトリウム、この論文の要約のところに出ています、白血病は明らかに低下した。
 (P24)これは累積死亡率をパーセンテージで表しております。濃度の高い硝酸、亜硝酸を飲んだ方が累積死亡の数は減っている。むしろ長生きをすることが分かったわけです。
 (P25)これは、読者から電話が掛かって来るかもしれないので、農水省の電話番号まで書いておきました。この電話番号はインターネットにも出ております。農水省も「野菜から摂取する硝酸塩の量をADIと直接比較することや、野菜中の硝酸塩量を限定することは適切でない」というWHOの報告を引用して支持しております。問い合わせ先に消費安全局農産安全管理課肥料検査指導班と書いてあるように、私が勝手に言っていることではありません。これも越野先生のお蔭で大変感謝をしております。肥料協会で話をしていても越野先生のお名前を知らない方はおられません。
 (P26)私は肥料成分は安全だ、アンモニア以外は飲めると言うことを常に言いますので、大塚化学の岡さんが実験をやってくれました。これはイチゴ用の培養液でECは0.5でちょっと低いですが、夜店で買ってきた金魚を培養液の中にいれて、これは3年前から飼っています。この間お会いしましたら、飼育を始めて5年になりますが、まだ生きている、当初、2cm〜3cmだった金魚が、私が(2年前に)見たときには、8cm〜9cmになっていました。アンモニア態窒素は入っていない硝酸態窒素の培養液です。すなわち、肥料の中で金魚は生きることができます。


『ホウ素とケイ素も人間の健康に必須』(P27)

 20年前の教科書でしたら、ホウ素は植物には必須であるが、動物、人間には必要がないと書いてあった。
 (P28)私、それを東大で1999年に講義しました。藤原先生が米国から帰国したばかりで、渡辺先生“それは違うのです!”、“今は、動物にホウ素は必要です。”とおっしゃる。このことは1998年に発見されたことです。藤原先生は当時はイオウの研究をされていましたが、やはり米国は情報が早いです。これは藤原徹先生に1999年に教えて貰いました。
 (P28)ケイ素については、これは元々分かっていたことですが、私がここで強調したいのは、人間のミネラル含有率と植物の乾物体の含有率の値を比較すると、この差が大きいのがホウ素でありケイ素です。
 (P29)人が農産物を食べることはホウ素を摂っている。その次はケイ素を摂っていることなのです。
 (P30)私が、今、肥料の夜明け と言っているもう一つは、動物やヒトに要らないと思われていたホウ素が人間に必須だったことです。藤原先生達が、世界で初めて、ホウ素のトランスポーターを同定された。直ぐに、米国の研究者も、人間の細胞にホウ素のトランスポーターがあることを見つけられた。そしてホウ素が欠如すると人の細胞が生育しないことが分かって、人でもホウ素は遺伝子的に必須となりました。有難いことです。肥料の夜明けの一つです。
 これ(写真)は、ホウ素の藤原先生、ケイ素のトランスポーターを発見したマー先生。いい仕事をされました。
 (P31)これ(写真)は、三輪京子さん、今、北大におられますけれど、サイエンスにトップネームの論文が通りましたから、凄い研究者です。(スライドの図は)その方の論文から引用した遺伝子の系統図で、イネの場合のホウ素トランスポーターとか、ヒトの場合とか、色々関連が分かっているわけです。
 (P34)このスライドのデータは米国農務省の研究でホウ素の人体実験です。被験者は48〜82歳の閉経後の女性13名で、試験期間中の167日は、管理された代謝ユニット生活。1日1万円でもなかなか行きにくいでしょう。日本でもカドミの実験の時もお金を随分使いました。ホテルに泊まり込みですから無料ではできない。167日間ですから多分刑務所ではないですか。ホウ素をやると女性ホルモンが高くなる。閉経後でもホウ素を十分摂っているとカルシウムとかマグネシウムが尿から出るのが減り再利用されます。
 ホウ素は骨形成にも関与することが分かっている。これはすごいことです。トランスポーターの発見も関係がなく、人間でのホウ素必須性を証明されているのです。例えば実験1は21日間のホウ素低食事後42日間ゼロと3mgのサプリメント処理をしてプラシーボ(誰がホウ素入りを飲んだか分からないようにして実験をする)をし、しかも隔離された場所でしています。日本は人体実験をほとんどしないです。カドミでやったくらいです。ホウ素を十分摂取していると頭の反応が早まります。実際のデータでは統計的な有意差もでております。
 脳波を測るとホウ素欠乏では目が開いていても寝た状態です。ホウ素が十分あれば落ち着いている。
 (P35)このスライドのデータはこの本にも書いていますし有名なものです。フラミンガムの子孫研究からですが、ケイ素を十分摂ると骨が丈夫になる。閉経後の女性には効果がありませんが、理由は後から説明します。
 (P36)ケイ素を摂るとコラーゲンが増える。オステオカルシンが活性化します。
 (P37)少し詳しく説明しますと、骨は、皮膚のコラーゲン(P37)も一緒ですがこのような形をしています。
 (P38)3年間で全部入れ替わります。子供の骨がいつまであったら可笑しいです。だから、絶えず破骨細胞で潰されて骨芽細胞で出来てくるのです。作るときに骨の基のカルシウムやリン酸はセメントみたいなものです、やっぱり柱が要ります。それがコラーゲンです。さっきの紐みたいなやつです。それからセメントと柱を結ぶ針金が要ります。それがオステオカルシンです。結局、材料のカルシウムやリン酸がたくさんあってもコラーゲンが必要です。ケイ素はコラーゲン合成を活性化します、(P38)の造骨細胞のところに作用している。女性ホルモンが不足するとここ(P38)の破骨細胞の働きを止めない。どんどんどんどん分解してします。骨密度が下がってきます。
 (P39)そして幸いなことに、玄米とか白米はミネラルウオーターに入っているケイ素と同じように人体に吸収されやすいケイ素と分かっている。バナナはケイ素がたくさん入っておりますが、余り吸収されません。


『ケイ素とマグネシウムの基礎研究が高温障害対策への疑問を解消』(P40)

 (P41)ネーグル新潟の社長様も来られておりますが、平成22年、皆様ご存じですが、新潟県の一等米比率は20%くらいでした。その時に山波農場は一等米比率100%を達成して、そのご指導をなさったのは清田さんです。
 (P42)その清田さんが私のこの本を物凄く推薦してくれるのです。清田さんは多くの書き込みをしながら、この本を読んで頂いているのです。何故、この本がいい本であるかと言うことを説明しますと、
 (P43)高温障害の定義のところに、これは森田先生が書かれたものを私が纏めたものです。まず温度を克服するためには、葉っぱが大きく葉温が下がることが大事です。そして、地力が向上して肥料のタイプの選択と書かれている。ここのポイントはケイ素とマグネシウムです。
 (P44)トランスポーターの研究が現場に役立っている一つの例です。実は、新潟県で一等米比率100%を取られた方々はケイ酸の追肥を行っている。重たいのに、私、講演では余り言わないし、今スライドに示しているこのグラフも載せていません。しかし、この本の216ページですね、『イネの登熟期には多くのケイ素を必要とするためLsi1遺伝子が多く発現する』と書いてある。これをちゃんと読んでおられる。
 (P44)このデータは分かり易い。ケイ素の必要な時期は田植えの始めの頃と登熟期です。籾殻のところにケイ酸が行っている。籾殻にケイ素が貯まります。従って、追肥の意味があった。それを清田さんは私の本から読み取られて「これは有難い」と言ってくれています。
 (P45)それからもう一つ葉っぱが大きくなる。これは私の部下がやってくれた。東北大学で学位を取りましたが、これはケイ素をよく吸収するキュウリです。ケイ素がたくさんあったら窒素の利用効率が上がる典型的な例です。葉っぱが大きくなっています。実際、清田さんに連れられてイネを見に行きました。ケイ酸施用で葉っぱが大きくなっています。
 (P46)それから、これは米国に講演を聞きに行って、私時々行きますが、オハイオ州立大学の農家に対する講演会、それに行ったら、分かりやすいのです。実は、ケイ素をやったポインセチアは水をやってから12日後でも萎れない。ケイ素やらないポインセチアは萎れる。枯れた後にケイ素をやったら直ぐに戻ります。ケイ素をやらない場合は戻らない。その時の説明が上手い。『ケイ酸で皆様が最も親しみやすい乾燥剤シリカゲルを思い出してください。水を吸いますから水持ちが良いのは当たり前です』。そう言う説明を米国の研究者は農家にしている。水持ちがよければ、葉温は下がります。
 (P47)もう一つ清田さんが分からなかったのは、清田さんが苦土を含むある肥料をやったら根が伸びるのです。今までの教科書では、「窒素は葉肥え」「リンは実肥え」「カリは根肥え」と書いてある。カリはどの田もやっています。だけど、これはマグネシウムをやった。根が伸びる、その理屈が分からなかった。私の本にそれが書いてある。
 (P48)もう一つ、苦土とケイ酸をやったら品質が良くなります。この理由も分からなかった。
 (P49)なぜかという説明をしますと、この本に書いてありますけれど、この写真ももちろん載せております、カリやマグネシウムが無かったら、根が小さい、カリが根の割合が一番小さくなる、次にマグネシウム。カリやマグネシウムが欠乏すると、根が小さくなる。何故かが分からなかった。何故かが分からなかった理由が分かった。これもこの本に書いてある。
 (P50)これ皆様方引用して頂いていますが、分かりやすい。実は、光合成で出来たデンプンはショ糖の形で一端外に出ます。そして、伴細胞のところから師管に入って、根であるとか、果実とか、子実のところに行く。ところが、この師管はショ糖で一杯です。中々入れません。入るときに、即ち、ここでATPのポンプ(プロトンポンプという)で(伴細胞中の)水素を一杯だしてしまう。従い、師管の中は、pHは高い。そこへ水素と一緒にショ糖が共に入る。何故マグネシウムが要るかと言うと、生体内にある90%のATPは必ずマグネシウムが必要です。ATPはマグネシウムと結合している。1個のプロトン、水素を出す為に、マグネシウムが1個、ATPが1個要ります。だからマグネシウムはここ(伴細胞)で効きます。
 カリはどうして効くかと言うと、トランスポーターの研究で分かったことですが、ここ(伴細胞)のカリのトランスポーターが減ると、実はここはアルカリにならなくてはいけない。水素が入り易くする為に、アルカリ材としてカリは要る訳ですがカリが無いと、ここ(伴細胞)に入るショ糖の輸送量が半分になります。カリとマグネシウムはここ(伴細胞)で物凄く働いて、糖の転流を促進して根にエネルギーを与えるから根が伸びるのです。マグネシウムとカリが欠乏すると根がエネルギー不足になることが分かった。
 これを清田さんがちゃんと理解してくれて農家の人に説明をしてくれた。だからあの本は良いということになった。
 (P51)これ(スライドのデータ)がマーシュナーの弟子のカクマックの仕事です。これもこの本に載せていますけれど、実際マグネシウム欠乏では糖が葉にたまり、糖の転流が少なくなる。
 (P52)マグネシウム欠乏では根が伸びないこと分かった。基礎研究が現場の農家にも役立つことが分かり、非常に有難いです。


『マグネシウムは人間の健康にも大切』(P53)
講演5

 (P54)マグネシウムは、この本にも書いてありますが、1989年に既にマグネシウム欠乏は活性酸素を生むことをマーシュナーは論文に書いている。
 (P55)この本(『土と施肥の新知識』)の38ページにも書いてありますが、日本人はマグネシウムの摂取量が少ない。
 (P56)そしてこれは私の実験ですが簡単にできます。マグネシウムをたっぷりトマトの葉っぱにやるとクロロシンが起きにくいです。
 (P57)1%の硫酸マグネシウムは、葉面散布の濃度です、それをやると活性酸素の発生が抑えられるとキスらの論文にでております。
 (P58)これは動物でも明らかに同じような効果が出てきて、何故か理由は分かりませんが、マグネシウムをやると活性酸素の発生が抑えられる。
 (P59)マグネシウムについては、小林純先生が1952年に大きな仕事をされておられます。この地方(青森県)は川の水が酸性の為にアルカリ分が少ない、これが脳卒中、脳梗塞が多い理由です。シュレイダーに帝国ホテルで直接論文を渡した。シュエイダーは読んでくれて、追試験をやるとアメリカでも河川の硬度と循環器疾患の発生率は逆相関の関係が認められた。
 最近NHKがマグネシウムは糖尿病に良いとの報道をしましたが、昔から分かっていたことです。マグネシウムの効用を普及する必要があります。青森県でも私は講演しますが、塩の過剰摂取ばかりを考えておられるが、実はマグネシウム不足も大きな要因なのです。
 (P61)これがシュレイダーの再現実験で、
 (P62)これがフィンランドの方々が飲み水の中のマグネシウムと循環器疾患、血管病と非常に関係があるのです。
 (P63)これは2004年になって肥満女性の方で糖尿病の方はマグネシウムを摂るとインシュリン抵抗性が改善されると発表されている。
 (P64)次に示す一連のスライドデータはインパクトあります。このスライドのデータは、国立癌研究センターが2010年に発表した疫学調査の結果です。マグネシウムの摂取量が多いと大腸癌が少ない。
 (P65)次、これは、マウスの実験ですが、マウスに発癌物質、しかも炎症を起こす物質を与えておいて、マグネシウムをやらないマウス、これは水によく溶けるクエン酸マグネシウムですが、7pm、35ppm、175ppmを与えた結果を学会に報告したものです。
 (P66)これは発癌処理だけでマグネシウムをやっていない、マウスの大腸です。
 (P67)これは人間に与えた場合14?、ほんの少しです、マグネシウムをやると少しガンが減っています。
 (P68)次は70?です、更に減っています。
 (P69)たくさんやるとかなり減っている。
 (P70)結果のとりまとめはこれです。ドーズレスポンズといって、マグネシウム摂取量が多くなると発がん率が減っているのが見られます、マグネシウムをやることによって、もう発生しかかっている、発生している癌もそれ以上の進行を止められるという画期的な結果です。
 (P71)この英語の訳は色々出来ます。こういうことが分かってくると、私たちが使うケイ素、マグネシウム、ホウ素、亜鉛。そう言う肥料を制御することによって、人間の健康に貢献できる、それは間違いないです。こう言う知識を私は広めたい。何故広めたいかと言うと、皆が元気になり、医療費が下がるからです。私が日本で初めてでは無いです、エーザイ生科研の中嶋常允先生が既に福島県でやっておられます。西会津町でミネラル野菜を農家で作って頂いて地域の高齢者や地域の皆が食べることによって、当時福島県の中でも最下位の寿命の短かった町が、10年後には上から20番目に上がりました。しかも西会津町の医療費が下がっているのです。
 鳥取の学会に行ったら、もう既に、マグネシウムの多い野菜の作り方を宇都宮大学の(関本)先生が発表してくれました。つい、私は“有難うございました”と言いました。肥料によって人間の健康に貢献できるのです。

 そして、今回の講演の結論ですが、
「肥料商の皆様方が農家に肥料を届けることは、作物だけでなく人間の命の源を届けること」です。ご清聴どうも有難うございました。


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